2015年8月21日金曜日

女子学生におすすめの本 その1

ロンキャリ女子(ロングキャリアを目指す女子)を応援する東経大。私自身、できるだけ長く働くつもり満々でいます。ロンキャリ女子の先輩として、女子学生におすすめの本をまとめました。
働くとはどんなことなのか、イメージをつかむために、とにかく読んでみてほしいな。特に就活を控えた学生さんはぜひ。

ベティ・L. ハラガン『ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方』

ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方 (光文社知恵の森文庫)
ベティ・L. ハラガン
光文社
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ビジネスという男性中心のゲームに女性が参加するために、ビジネスのルールを知って対策しようという本。アカデミックな世界でサバイブしたい女子院生も読んでおいて損なし。大学も男性的ゲームの規則が幅きかせてますから。

女性の多くが「やりがいのある仕事」を求めて時間を費やし、転職を繰り返しています。これは、私から見れば非常に時間の無駄です。キャリアとは、結局は「仕事を続けていくこと」そのものなのです。「やりがい」を求めるあまり、目の前にある可能性を捨ててしまうのはもったいないことではないでしょうか。

    「もっと私を活かす仕事があるはず」「もっとやりたいことがある」という気持ちを持つのは自由です。しかし、現実的にいえば、働くこととは「生活の糧を得ること」です。(女性の中にはその部分は夫に負担してもらい、自分は純粋に「やりがい」のためだけに仕事をしたいという人もいるようですが、このような人は、本書の読者対象として想定していません。)しかし、「仕事をする」ということとは単に生活を支えるだけでなく、あなたの持っている技術を活かしたり、いろいろなことに挑戦したり、自分では気づかなかった才能を発見したりできるチャンスでもあるのです。したがって、仕事とは「参加」することに意義があるもので、ただ見ているだけではほとんど何の意味もないのです。仕事をしているということで、あなたは多くの人に出会えたり、社会の仕組みを知ることができたり、あなた自身が社会に対して影響を与えることもできるのです。それならば、なるべく多くの報酬や権限を仕事から得るようにしたいと思うのはしごく当たり前のことではないでしょうか。(同書、85-6頁)

チャンスという言葉はまさにその通り。仕事するってことは成長するチャンスを与えられることだと思う。チャンスが与えられるのは、すでに幸せなことです。

シェリル・サンドバーグ『LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
シェリル・サンドバーグ
日本経済新聞出版社
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facebookのCEOである著者が、働く女性へのメッセージを綴った本。本書のエッセンスを一言で言うと、「明確に意欲を持って踏み出せ!」ってこと。がんばることは無駄じゃないと勇気づけられ生ます。

大多数の女性が家計のやりくりや家族の世話に追われていることも、よく承知している。本書の一部が、いつどこでどれだけ働くかを選ぶ余地のある幸運な女性に最も役立つことは認めよう。しかし他の部分は、あらゆる職場、あらゆる共同体、あらゆる家庭で女性が直面する状況に当てはまると考えている。より多くの女性がトップに立つようになれば、すべての女性の機会を拡げ、より公正な処遇を得られるようにできるはずだ。(「序章」、19頁)

牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』

部長、その恋愛はセクハラです!  (集英社新書)
牟田 和恵
集英社 (2013-06-14)
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非常に実践的でためになるセクハラを避けるためのガイド本。セクハラが具体的にどういうふうに行われるものなのかが理解できる。(おそらく、セクハラ被害者の最初のハードルは、自分がまさにセクハラを受けていると自覚できるかどうかだと思う。)

さらに、本書を読むと、女性は社会や職場で自らの置かれた立場についてよく自覚できる。男性は自らの立場や行いを(多少)客観視できる。社会について知見を深めるという意味でもおすすめです。

長くなりそうなので、その2に続く。

2015年8月1日土曜日

ざっくばらんにイチオシ中公新書

中公新書ファンの私。テーマなしに、おすすめ本をまとめました。
以前まとめた「中公新書の世界史」「中公新書の日本史」もご覧ください。

吉原真理『ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男』
アメリカでは、ネットで恋人探しをするのが一般化しているらしい。そこで、アメリカの大学教員である著者が実地で恋人探し・出会いを体験したレポートが本書。
出会いを通して見えてくるアメリカ社会(舞台はニューヨークとハワイ)の有り様が語られる。著者がかなりぶっちゃけていて、体験エッセイとして非常に面白い。出会いのあれこれやアメリカ社会の解説も興味深いのだが、本書の何よりの魅力は著者自身にあると思う。

ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書)
中央公論新社 (2014-07-11)
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大沼保昭『「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪』
アジア女性基金の構想、設立、実践という「政治」に関わった著者が、問題の背景や経緯、その後を当事者として語った本。「慰安婦」問題についても勉強になるけれど、政治のリアルを知ることができる。
当事者として関わった著者の言葉はどっしり重みをもっており、そのリアリズムに強い印象を受けた。著者の主たる主張は「俗人を規準とする倫理、道徳で考えるべきだ」というものだ(同書98頁)。すべてのページに誠実さを読み取ることができる。上に書いたように、政治の証言として面白く、「活動」とはいかにあるべきかを考えさせてくれる良書。


「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪 (中公新書)
大沼 保昭
中央公論新社
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菅原和孝『ブッシュマンとして生きる』
著者の人柄に惹き付けられる一冊。なんてロマンチックな人なんだ!真摯さに心打たれます、本当に。こういう人間になりたい。


ブッシュマンとして生きる―原野で考えることばと身体 (中公新書)
菅原 和孝
中央公論新社
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中公新書ではないけれど、こちらもぜひあわせて読んでほしい。著者に惚れちゃうよ。
菅原和孝『もし、みんながブッシュマンだったら』
もし、みんながブッシュマンだったら
菅原 和孝
福音館書店
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高田里惠子『学歴・階級・軍隊 — 高学歴兵士たちの憂鬱な日常』
読みながらぎゃーって叫びたくなるような、自意識炸裂の一冊。
こういう本を読むと、戦争、ダメ。ゼッタイ。って思います。というのも、私はそういう困難な状況において、必ず、「現実的であり、保守的であり、付和雷同的であり、物質的」な、つまりは卑俗な性質を露呈せずにはいられないだろうから(「」内は本書44頁に引用されている、民衆を形容する表現)。

学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)
高田 里惠子
中央公論新社
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小谷野敦『日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで』
恋愛思想を扱った本は数あれど、副題にあるとおり「記紀万葉から現代まで」の見取り図を与えてくれるところにこの本を読む価値がある。とはいえ、抜群に面白いのは現代のところ。ここに興味持つ人は『もてない男』を読めばもっと面白いと思う。

日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで (中公新書)
小谷野 敦
中央公論新社
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小谷野敦『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男』
小谷野本をもう一冊。ファンなので。国文学者としての小谷野先生の最高傑作の一つだと思う。

夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書)
小谷野 敦
中央公論社
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会田雄次『アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界』
中公新書のクラシック。だったんですが、今は中公文庫に入っているのですね。
(8/4追記:中公新書でも継続刊行中だそうです。)
救いのない軍隊および収容所生活が描かれているのかと想像して読むと、意外にもユーモアも交えて淡々とした叙述。日本人についてよりも、イギリス人・インド人・ビルマ人の観察に割かれた部分が多い。とはいえ、戦争体験者の生々しく重い言葉も並んでおり、書ける著者を尊敬。

アーロン収容所 (中公文庫)
会田 雄次
中央公論社
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