2015年8月1日土曜日

ざっくばらんにイチオシ中公新書

中公新書ファンの私。テーマなしに、おすすめ本をまとめました。
以前まとめた「中公新書の世界史」「中公新書の日本史」もご覧ください。

吉原真理『ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男』
アメリカでは、ネットで恋人探しをするのが一般化しているらしい。そこで、アメリカの大学教員である著者が実地で恋人探し・出会いを体験したレポートが本書。
出会いを通して見えてくるアメリカ社会(舞台はニューヨークとハワイ)の有り様が語られる。著者がかなりぶっちゃけていて、体験エッセイとして非常に面白い。出会いのあれこれやアメリカ社会の解説も興味深いのだが、本書の何よりの魅力は著者自身にあると思う。

ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書)
中央公論新社 (2014-07-11)
売り上げランキング: 68,302

大沼保昭『「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪』
アジア女性基金の構想、設立、実践という「政治」に関わった著者が、問題の背景や経緯、その後を当事者として語った本。「慰安婦」問題についても勉強になるけれど、政治のリアルを知ることができる。
当事者として関わった著者の言葉はどっしり重みをもっており、そのリアリズムに強い印象を受けた。著者の主たる主張は「俗人を規準とする倫理、道徳で考えるべきだ」というものだ(同書98頁)。すべてのページに誠実さを読み取ることができる。上に書いたように、政治の証言として面白く、「活動」とはいかにあるべきかを考えさせてくれる良書。


「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪 (中公新書)
大沼 保昭
中央公論新社
売り上げランキング: 158,603


菅原和孝『ブッシュマンとして生きる』
著者の人柄に惹き付けられる一冊。なんてロマンチックな人なんだ!真摯さに心打たれます、本当に。こういう人間になりたい。


ブッシュマンとして生きる―原野で考えることばと身体 (中公新書)
菅原 和孝
中央公論新社
売り上げランキング: 239,916


中公新書ではないけれど、こちらもぜひあわせて読んでほしい。著者に惚れちゃうよ。
菅原和孝『もし、みんながブッシュマンだったら』
もし、みんながブッシュマンだったら
菅原 和孝
福音館書店
売り上げランキング: 554,715


高田里惠子『学歴・階級・軍隊 — 高学歴兵士たちの憂鬱な日常』
読みながらぎゃーって叫びたくなるような、自意識炸裂の一冊。
こういう本を読むと、戦争、ダメ。ゼッタイ。って思います。というのも、私はそういう困難な状況において、必ず、「現実的であり、保守的であり、付和雷同的であり、物質的」な、つまりは卑俗な性質を露呈せずにはいられないだろうから(「」内は本書44頁に引用されている、民衆を形容する表現)。

学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)
高田 里惠子
中央公論新社
売り上げランキング: 265,363

小谷野敦『日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで』
恋愛思想を扱った本は数あれど、副題にあるとおり「記紀万葉から現代まで」の見取り図を与えてくれるところにこの本を読む価値がある。とはいえ、抜群に面白いのは現代のところ。ここに興味持つ人は『もてない男』を読めばもっと面白いと思う。

日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで (中公新書)
小谷野 敦
中央公論新社
売り上げランキング: 400,582

小谷野敦『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男』
小谷野本をもう一冊。ファンなので。国文学者としての小谷野先生の最高傑作の一つだと思う。

夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書)
小谷野 敦
中央公論社
売り上げランキング: 446,808

会田雄次『アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界』
中公新書のクラシック。だったんですが、今は中公文庫に入っているのですね。
(8/4追記:中公新書でも継続刊行中だそうです。)
救いのない軍隊および収容所生活が描かれているのかと想像して読むと、意外にもユーモアも交えて淡々とした叙述。日本人についてよりも、イギリス人・インド人・ビルマ人の観察に割かれた部分が多い。とはいえ、戦争体験者の生々しく重い言葉も並んでおり、書ける著者を尊敬。

アーロン収容所 (中公文庫)
会田 雄次
中央公論社
売り上げランキング: 26,660

関連記事
中公新書の世界史
中公新書の日本史